【連載おとぎ話】 ペコリーノとシェーブルの戦い― 「第3話 • 衰曦刺の洗脳」

ペコリーノとシェーブルの戦い

ペコリーノはキガオカシ山を下り、ヤッカイナ地方に入った。

この地方には医者という名の衰曦刺(サギシ)がいる。しかし、医者が衰曦刺であることを知っているのは、この地方ではペコリーノとアリエーテだけだ。そして、その医者に騙されている人のことを、この世界ではシェーブルと言う。

ペコリーノが川岸を歩いていると、アリエーテに出会った。

アリエーテはペコリーノの味方だ。彼もまた、薬の危険性をあちこちで述べ伝えている。

アリエーテは言った。

「この地方も、サギシの洗脳で埋め尽くされている。

私はまた場所を変えて、皆に、述べ伝えていく。

あなたもこの地方から出ていった方が良い。

この地方は汚れている。腐った細胞のようだ。」

ペコリーノは言った。

「あなたが言うぐらいだ。余程のことなのだろう。私も一回り巡回してから、そうすることにする。」

そう話していると、衰曦刺(サギシ)の悪霊に取りつかれた、一体のシェーブルがやって来た。彼は重い皮膚病を患っており、彼の仲間もまた様々な病気を患っている。

すると、シェーブルは言った。

「お前たちが薬は危険だとか言っているから、皆、一部の薬を飲まなくなってしまい、病気が悪化してしまった。

どう責任をとるつもりだ。

お前が薬を飲まさないから病気が悪化してしまったのだ。

きちんと薬を飲んでいれば、病気があのように悪化することはなかったかも知れないのに。」

ペコリーノは言った。

「そんなに薬が飲みたいのなら飲んでみるがよい。

あなたたちの病気は治ることなく、むしろ薬を減らしていたときの方が良かったと思うようになるだろう。

しかし、それでもあなたは分からない。

あなたは不思議に思わないのか。両手いっぱいにある薬を見て、何も思わないのか。

では、私もあなたに問う。

両手いっぱいに溢れるほどの薬を飲んで、健康になれるのか。本当に病気が治るのか。

健康になれると思うなら、飲んでみるがよい。あなたの気がそれで済むのなら。

しかし、それでもあなたが認めることはないだろう。

あなたは私たちを恨むようになる。」

アリエーテも言った。アリエーテは説明するとき、口調が変わる。

「『お前が薬を飲ませないから病気になったのだ』などと言われても関係ないじゃないですか。

こっちは薬は毒だと分かっているんですから。それだけですよ。

毒で病気になっているのに、毒を飲んで治るわけがないじゃないですか。その毒でまた苦しむだけですよ。毒なんだから。

毒だと言っているのに、毒だと分からない。で、分かってくれなくて、恨まれたって関係がありません。その人はもう、地獄に行くだけです。

だって、毒だと言っているのに、分かってくれないし、それを飲み続けるんだから、 地獄に行って欲しくなくても、自動的に行くことになるじゃないですか。

しかも、毒を飲みながら人を恨むのなら、なおさらじゃないですか。

こっちは、毒だと伝えて毒を飲まさないようにする、で、医者は毒だと伝えずに毒を処方する。それで、『最高の薬だ』とか言って。どっちが悪か分かるでしょ。

それでも、医者が神扱いされるんですから。もう、それ信じる人は地獄に行くしかないじゃないですか。

私たちはただ薬は毒だと伝えているだけです。それで、何で怒られるんですか。

そもそも、本人が病気を治す気がないんだから、ダメじゃないですか。

医者も『この病気は治る病気ではない』とか言うし。治す気ないでしょ。最初っから。

治らないのなら、何で薬を飲むんですか。医者も治らないと言っているのに。 それで、また違うところがいけなくなって、また違う病気になる。で、また薬が増えて、また違う病気になる。その繰り返しですよ。

何のために飲んでいるんですか。 死ぬことしか考えていないじゃないですか。本人も医者も薬の作用も。」

シェーブルは頭が痛くなって、どこかへ去っていった。

(第4話につづく)

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